当協会/行政からのお知らせ

【注目】窓廻りのシーリング目地、実は“撤去しない方が長持ちする”場合も──最新の施工判断基準について 2023.12.12

【注目】窓廻りのシーリング目地、実は“撤去しない方が長持ちする”場合も──最新の施工判断基準について

近年、外壁の塗装や補修工事の現場で「窓廻りのシーリング目地(以下、窓廻り目地)」に関する施工方針の変わりつつあることをご存じでしょうか?

これまでは、「既存シーリングはすべて撤去して新たに打ち替えたほうがいいんでは?(撤去打ち替え)」のが疑問視されていましたが、最近では“あえて撤去せずに打ち増し施工をした方が長期的に安定する”ケースがあるという調査結果が出てきています。


■ 窓廻り目地は「防水紙と連動する構造」。むやみな撤去が逆効果になることも

窓廻りの目地は、構造上「防水紙」と連動して動きを吸収する箇所です。
この部分のシーリング材を無理に撤去すると、内部の防水紙を傷つけたり、シーリングの止水構造を壊してしまうリスクがあることが分かってきました。

特に築10年以上経過した物件で、サッシ周囲の取り合いが複雑な構造の場合、過度な撤去作業は、かえって雨水の侵入口を増やしてしまう危険性があるため、慎重な判断が必要です。


■ 調査・実証の結果:下地が健全な場合は「打ち増し」の方が密着も良く、持ちも良好

当協会が過去に調査・監修した約120棟の住宅において、シーリングがしっかり密着しており、著しい劣化や剥離が見られない場合に限って打ち増し施工を実施したところ、10年後も著しい再劣化は見られなかったという事例が多数確認されています。

これは、高性能な変成シリコン系やウレタン改質系のシーリング材を正しいプライマー処理のもとで使用すれば、既存シールを撤去しない方が安定するという施工理論を裏付ける結果となっています。


■ ただし例外あり:「明らかに傷んでいる」「隙間が空いている」「指で押すとフカフカする」場合は撤去が必須

すべての窓廻り目地が打ち増しに適しているわけではありません。

以下のような状態が確認された場合は、既存シーリングを一部または全面撤去した上で、打ち替えを実施する必要があります。

  • シール材に亀裂・破断がある

  • 外壁とシーリングの間に隙間が空いている

  • 指で押すと中がフカフカしていて硬化していない

  • 明らかに既存シーリングが密着していない(浮いている)

このような場合は、放置すると雨漏りの原因になるため、部分撤去+部分打ち替えのハイブリッド施工が最適とされます。


■ 全国外壁屋根調査協会の基本方針

 

当協会では、以下の基準で窓廻り目地の判断を行っています:

状態 処置内容
健全な既存シールで密着良好 撤去せずに打ち増し推奨
表面に小さなクラック・劣化あり 状態に応じて部分撤去+増し打ち
隙間・亀裂・剥離が明確に見える 完全撤去+シール打ち

いずれの場合も、現地での目視確認と触診(押し込み確認)、カッターでの簡易テストを実施したうえで判断しております。

【注意喚起】窓廻りのシーリングを「全部撤去すべき」と一律に勧めてくる業者にはご注意ください

塗装工事や外壁リフォームの現場で、
「既存のシーリングはすべて撤去しないと意味がない」
「残したままだとすぐに剥がれる」
といった説明を受けたことはありませんか?

たしかに、劣化が激しい箇所では撤去が必要ですが、近年の調査や施工実績から、窓廻りの目地については“むやみに撤去しない方が長持ちする”ケースもあることが判明しています。

そのため、一律に「全面撤去」をすすめてくる業者には、裏に別の意図や知識不足の可能性があるとして注意が必要です。


■ 【リスク1】防水紙を傷つけてしまう危険

窓廻りのシーリングの奥には「透湿防水シート」が入っており、これが雨水の最終的な侵入防止層となっています。
しかし、無理な撤去作業を行うと、

  • カッターや工具が防水紙に達してしまう

  • 目には見えない小さな破れや切れが生じる

  • 数年後に雨漏りが発生しても原因特定が困難

というリスクがあります。

とくに築10年以上で目地の柔軟性がなくなっている場合、シーリング材が防水層と一体化していて、引き剥がす際に中の防水層を破ってしまうことが非常に多いのです。


■ 【リスク2】構造的に「絶縁層」が壊れる

窓廻りのシーリングは、窯業系サイディングの収縮とサッシ枠の異種動作を緩衝する絶縁ゾーンの役割を果たしています。

施工要領通りに打設された目地は、下地との適切な接着面を持ち、動きに対応した設計になっているため、
不用意に撤去してしまうと:

  • 「三面接着」になって動きに追従できなくなる

  • シーリングの早期破断・浮き・剥がれを引き起こす

  • 本来10年以上もつはずの高耐久シール材が、わずか数年で切れる

といった問題が発生します。


■ 【リスク3】施工単価を吊り上げる目的のケースも

実は一部の業者では、「撤去」という工程を増やすことで、人工(作業費)やシーリング材の数量を水増しし、見積り金額を高く見せるケースも確認されています。

たとえば:

  • 打ち増しなら3~5m分で済むところを、撤去打ち替えで倍以上に計上

  • 無理な撤去で施工時間が延びた分を「追加請求」される

  • 仕上がりも悪くなり、雨仕舞の不具合まで発生

というように、費用だけでなく品質面・リスク面の両方でデメリットが大きくなるのです。


■ お客様へのお願い

窓廻りの目地は、建物の防水において非常に重要な部位です。
しかし、施工店によっては「全部撤去しないとダメです」と一律に言う業者もいれば、「全部そのままでOKです」と安易に済ませる業者も存在します。

当協会では、お住まいの状態に応じて最適な判断を行うことが、お客様の住まいを長く守る第一歩と考えています。

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